先日、税務顧問をしている会社の会計を見ていたのですが、その会社が所有する土地建物の売却の取引がありました。経理担当の方は入金金額をそのまま雑収入にあげる処理をしていたので、こちらで訂正を入れました。このような間違いは意外と多いのではないでしょうか。
法人がその所有する土地建物(ビルやマンションのように土地と建物が一体となっているもの)を売却した場合、仕訳や消費税の取り扱いが複雑になるので、詳しく整理したいと思います。
消費税の課税事業者である個人事業主が事業として所有する土地建物についても同じです。
※公開日または更新日時点の法令に基づき記載しています。
※わかりやすく解説するために法律の詳しい内容を省略、簡素化しています。
土地建物を売却した場合の消費税について
土地の売却については非課税取引きであるため、消費税はかかりませんが、建物の売却については消費税が課税されます。
売買契約書に 「土地代金1000万円 建物代金500万円 消費税50万円」と消費税まで明記されていれば、何も問題はないのですが、実際には、土地と建物を一括して売却する契約をして、全体としての代金だけが記載されている。なんてことも少なくはありません。
消費税を申告するためには、この取引にかかる消費税を把握するために、建物の代金がいくらかが問題となるため、その売却代金を土地代金と建物代金に分ける必要があります。
土地と建物を按分する方法
売却代金を土地代金と建物代金に分ける方法はいろいろな考えがありますが、客観的で合理的な方法であるということが大切です。
固定資産評価額の比率により按分する方法
売却代金を土地の固定資産評価額と建物の固定資産評価額の比率により按分する計算方法です。
固定資産評価額は土地建物の所有者に送付される固定資産税の納税通知書に記載されています。
固定資産評価額は入手しやすく、合理的な方法であるためよく使われる方法です。
鑑定評価額による方法それぞれの時価により按分する方法
不動産鑑定士にその土地建物の鑑定を依頼し、鑑定評価額の比率により按分計算する方法です。
合理的な方法ではありますが、一定の費用がかかります。
時価により按分する方法
土地と建物のそれぞれの時価を算定し、時価の比率により按分する計算方法です。
合理的な方法ですが、どのように時価を算定するのかが難しいところです。
仕訳について(会計上の仕訳と会計ソフトへの入力)
土地建物を売却した場合の仕訳ですが、まず会計上の仕訳を考え、そのままの仕分けを入力するのではなく、消費税を考慮した仕訳を考えて入力しなければ、消費税の集計の時に間違った金額で集計されてしまう危険があります。
土地建物売却の仕訳は会計ソフトに入力する際、消費税の額を正確に認識させるために固定資産売却益の科目を課税(建物代金)と非課税(土地代金)、不課税(正しい固定資産売却損益の認識のための調整)とに使い分けて入力する必要があります。
売却益が発生する場合
売却代金 土地1000万円 建物550万円
簿価 土地700万円 建物400万円 固定資産売却益450万円
↓
会計上の仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 1550万円 | 土地 | 700万円 |
建物 | 400万円 | ||
固定資産売却益 | 450万円 |
会計ソフト入力するときの仕訳
建物の売却代金である550万円を課税売り上げとして認識させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 550万円 | 固定資産売却益 (課税取引) | 550万円 |
固定資産売却益 (不課税取引) | 400万円 | 建物 | 400万円 |
現預金 | 1000万円 | 固定資産売却益 (非課税取引) | 1000万円 |
固定資産売却益 (不課税取引) | 700万円 | 土地 | 700万円 |
売却損が発生する場合
売却代金 土地 200万円 建物 550万円
簿価 土地 700万円 建物 400万円 固定資産売却損 350万円
↓
会計上の仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 750万円 | 土地 | 700万円 |
固定資産売却損 | 350万円 | 建物 | 400万円 |
会計ソフト入力時の仕訳
建物売却代金である550万円を課税売り上げとして認識させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 550万円 | 固定資産売却益 (課税取引) | 550万円 |
固定資産売却益 (不課税取引) | 550万円 | 建物 | 400万円 |
固定資産売却損 | 150万円 | ||
現預金 | 200万円 | 固定資産売却益 (非課税売上) | 200万円 |
固定資産売却益 (不課税売上) | 200万円 | 土地 | 700万円 |
固定資産売却損 | 500万円 |
まとめ
土地建物を売却したとき、売買契約書により建物の売却価格や消費税が明記されていない場合には、建物の消費税額を把握するために、按分計算で算定します。按分計算の方法は固定資産評価額により按分計算されることが、実務上は多いです。
土地建物売却の仕訳は会計ソフトに入力する際、消費税の取引ごとに入力する工夫が必要です。少し複雑ですが、上記の仕訳が参考になれば嬉しいです。
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