開業初年度に消費税の還付を受けたい時、免税事業者から課税事業者になる場合があります。そんな場合に提出するのが消費税課税事業者選択届出書ですが、そこで注意が必要な、消費税の「事業を開始した日」について考えてみます。税務署に開業届を出した日ではないんです。。。。
※公開日または更新日時点の法令に基づき記載しています。
※わかりやすく解説するために法律の詳しい内容を省略、簡素化しています。
消費税の「事業を開始した日」は重要。事業の準備を始めた日です!
消費税課税事業者選択の特例
初期投資が大きかった場合など、開業の初年度に支払った消費税の額が預かった消費税の額を上回ることがあります。ただ、開業初年度は基準期間がないので、何もしなければ消費税は免税事業者なので、消費税の還付を受けることはできません。
そんな時に使うのが免税事業者が自ら課税事業者を選択することができる特例です。
この特例は「課税事業者選択届出書」を提出した日の属する課税期間の翌課税期間から課税事業者となることができるというものです。わかりにくい言い回しですが、個人事業主の場合だと「2022年から課税事業者となりたいなら2021年中にこの届出を出しておいてね」と言うことです。
新規開業の場合にはその開始前に届出書を出すことはできないので、この場合は、届出書を提出した課税期間から課税事業者となることができます。ただしこの場合、注意しないといけないことがあるんです。
まず確認したいのですが、消費税法ではこのように記載されています。
その提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、課税事業者選択届出の効力は、その提出をした日の属する課税期間から生ずるものとされています。
ここで問題なるのが、この事業を開始した日というのはいつなのか?ということです。
消費税の「事業を開始した日」とはいつ?
ここでいう「事業を開始した日」とは「事業者が国内において課税資産の譲渡等にかかる事業を開始した日」と定められていてます。ポイントは「課税資産の譲渡等を開始した日」ではないところです。
「事業を開始した日」はたとえば小売業であれば、その商品の販売を始めた日ではなくて、その小売業のための準備として事務所の契約や商品の仕入れなどを行った日となります。
もちろん税務署に提出した開業届に記載した「開業の日」でもありません。
「事業を開始した日」が重要な理由
ではこの場合、いつ課税事業者選択届出書を提出すればよいでしょうか?
- 2021年10月から事業に必要な備品等を購入したり商品の仕入れや事務所の契約など開業の準備に入る。
- 2022年2月1日を開業日として「開業届」を税務署に提出し事業を開始。2022年1月に高額な設備の購入があり、消費税の還付を受けたいと考えている。
答えは、2021年中に提出する必要があります。2022年2月1日が開業日だから、2022年中に提出すれば、2022年から消費税の課税事業者となって還付を受けられると思うかもしれませんが、それでは遅いんですね。
消費税では事業の準備を始めた2021年を「事業を開始した日の属する課税期間」と考えるので、2022年に提出した場合は、開業初年度の考え方ではなく、原則的な考え方となり、翌課税期間である2023年から課税事業者となり、2022年の消費税の還付は受けることができません。
また、この事例の場合、2021年に提出し、2021年から課税事業者となることができますが、、届出に2022年から課税事業者となることを記載して、2022年から課税事業者となることも可能です。
事業者が課税事業者選択届出書を提出した場合には、当該課税事業者選択届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間を除く。)について、課税事業者を選択できるのであるから、当該課税事業者選択届出書を提出した日の属する課税期間が令第20条各号《事業を開始した日の属する課税期間等の範囲》に規定する課税期間に該当する場合であっても、当該課税期間の翌課税期間から課税事業者を選択することもできることに留意する。(注) この場合、事業者は、当該課税事業者選択届出書において適用開始課税期間の初日の年月日を明確にしなければならない。
「開業の日」といえば「開業届に書いた日かな?」と思われるかもしれませんが、消費税では少し複雑です。
消費税の「事業を開始した日」を理解して、届出の提出を間違えないように気をつけましょう!
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